黒字倒産とは何か

黒字倒産とは、利益が出ているのに倒産すること


黒字倒産とは、会社が黒字にもかかわらず、倒産してしまうことです。
黒字は、利益があること、すなわち、儲かっているということです。
「儲かっているのに倒産した」

これが、黒字倒産です。

ふつうに考えれば、おかしな話です。
しかし、意外に黒字倒産の事例は多いのです。
さらに、くわしく具体例をつかって、考えてみましょう。

A社の営業成績は、つぎのとおりでした。 決算 3月  (単位:万円)

売上高1,000
仕入高800
利益200

A社の利益は、200万円。しっかり、利益が出ています。黒字です。

ふつうに考えれば、A社は200万円儲かった、と判断できます。
しかし、A社は翌月の4月に倒産しました。
200万円の黒字が出ていたのに倒産したのです。

これは、典型的な「黒字倒産」の事例です。

なぜ倒産したのでしょうか。

A社のお金の動きを調べると、つぎのようなことが分かりました。

売り上げの代金である1,000万円の入金日    5月末

A社の4月末のお金の動きはつぎのようになります。   (単位:万円)

売上入金         0

仕入先への代金支払い  800

資金不足       ▲800


売上代金である1,000万円の入金が5月末ですから、4月の入金はありません。
一方で、4月の仕入先に対する800万円を支払う必要があります。
しかし、5月末にならないと売上代金である1,000万円の入金がないので、支払うお金がありません。
売上があっても、お金がなければ、意味がない、ということです。

なぜ、会社は倒産するのだろうか?

倒産の要因は、当然ながらさまざまです。
しかし、倒産の最大の理由を一つあげるとすれば、以下のようになるでしょう。

会社にお金がなくなったから倒産した。

ということになります。

会社を取り巻く、経済情勢が変化した。
あるいは、消費者のニーズをつかめず、売り上げが減少した。
倒産に関するさまざまな理由が世間で解説されます。
しかし、原因をとことん突き詰めれば、「会社にお金がなくなり倒産した」ということです。
会社にお金があれば、たとえ売り上げが落ち込んだとしても事業は継続できます。
しかし、お金がなくなれば、いくら売上げが増加していても、事業の継続が困難になります。

ここでいう、お金とは自社のお金とは限りません。
銀行などからの借入金でもよいのです。
つまり、会社にあるお金のほとんどが、銀行からの融資でも、お金があればよいのです。
経営が厳しくなり、会社にお金が不足すると経営者や経理責任者が銀行を訪問する回数が増えてきます。
これは、銀行にお金を借りに行くためです。

会計学の大前提は、会社は倒産しない!は本当か?!


会計学には大前提のルールがあります。
それは、ゴーイングコンサーンです。

これは「会社は倒産しない」というルールです。

ちょっと、無茶苦茶な基本ルールのように感じる人もいるでしょう。
しかし、これは当然といえば当然の基本ルールといえます。
なぜなら、会社の倒産を前提としては、物事は何も始まらないからです。

倒産を前提に起業しようとする人はいませんよね。
また、倒産を前提にしている会社で働こうとする人はいません。

今から倒産する会社にお金を融資する銀行もありません。
ゴーイングコンサーンという大前提のもと会計の様々なルールが決められています。

基本的なことを一つ紹介します。
会社は、年に1回、財産や営業成績を集計し、会社が儲かったのか、あるいは損したのかを計算します。
これを「決算」といいます。

決算とは、利益を計算するために意図的に区切って期間計算を行うことです。

たとえば、4月1日から翌年3月31日までの1年間を計算するとします。
ある建設会社が、工事を2月1日から6月30日までの工期で始めているとします。
この工事の売上げや仕入先への支出は、決算の期間とズレがあります。

このため会計では、さまざまなルールで、このズレの調整や修正をする必要が出てきます。
そこが、会計の難しさであり、面白さでもあります。

ですから、3月31日の決算をおこなうためには、会社が存続しているのが大前提です。
6月30日までの工期竣工まで、会社が存続するという大前提が必要なのです。
会社は倒産しないという大前提にしなければ、会計が成り立たない、というわけです。

                     [黒字倒産とは何か ダイジェスト講義]