ABC分析とは何か
会社には、さまざまな取引会社が存在します。
ふつう会社の規模が大きくなり、売上高の拡大とともに取引会社の数も比例して大きくなるものです。
起業したばかりの会社と歴史ある有名企業では、当然ながら取引会社の規模や数が違ってきます。
ところで、どの会社にも数ある取引会社の中でも、とくに重要なお得意様がいるものです。
お得意様とは、つまり、取引金額の多い会社のことです。
したがって、お得意様は、会社の売上高や経営に大きな影響を与えます。
ときにお得意様との取引停止や取引金額の減少によって、会社の存続が危ぶまれることさえあります。
数ある取引会社の中から、どの取引会社が重要なのか、そして、特に慎重に注意を払う必要があるのか、を知っておきことは大切です。
売上高の推移でお得意様を知る
【例1】で、具体的にみていきましょう。
【例1】関東株式会社の直近3年間の取引会社の売上高の推移はつぎのとおりです。(単位:百万円)
取引先名/年度 | 01年 | 02年 | 03年 | 合計 |
札幌商事 | 200 | 160 | 110 | 470 |
仙台物産 | 120 | 110 | 120 | 350 |
大阪工業 | 60 | 110 | 130 | 300 |
広島通信 | 40 | 180 | 20 | 240 |
福岡製作所 | 140 | 10 | 30 | 180 |
【解説】
直近3年間の取引総額は、札幌商事がNO1です。
しかし、年を追うごとに単年度の取引金額が減少しているのが、気がかりです。
札幌商事が求める商品やサービスの変化に関東(株)が十分に対応できていない可能性があります。
仙台物産は、毎年、コンスタントに取引されていることがわかります。
大阪工業は、ここ2・3年、確実に取引金額が増えてきています。
関東株式会社が、大阪工業のニーズに確実に応えてきたことがわかります。
広島通信と福岡製作所は、ある年度に突発的に大きな取引があったようです。
その原因と背景を確認しておく必要があります。コンスタントな取引ができる可能性があります。
このように年度ごと時系列に取引会社の売上高推移を整理するだけで、重要取引先が明快になります。
そして、今後の営業方針の参考資料にもなります。数字を整理するだけでも意外に有効な会計データになるのです。
ABC分析とは何か
80対20の法則というものがあります。
ざっくり言えば、売上高の80%は、わずか20%の取引先が生み出す、というものです。
これは、ABC分析ともいわれ、こちらの呼び名が認知度は高いかもしれません。
ABC分析は、取引会社ごとの売り上げ分析の一つです。
80対20の法則を会社の数字として客観的に裏付けするものです。
日本商事株式会社の取引先で、ABC分析をみていきましょう。
説明を簡単にするために取引会社の名前をアルファベット名で表します。
日本商事㈱のおもな取引会社をABC分析すると【表1】のようになります。
【表1】
販売順位 | 会社名 | 売上高(百万円) | 構成比(%) | 累積(%) |
1 | A社 | 100 | 25.6 | 25.6 |
2 | B社 | 95 | 24.3 | 49.9 |
3 | C社 | 90 | 23.1 | 73.0 |
4 | D社 | 50 | 12.8 | 85.8 |
5 | E社 | 20 | 5.1 | 90.1 |
6 | F社 | 15 | 3.8 | 94.7 |
7 | G社 | 15 | 3.8 | 98.5 |
8 | H社 | 5 | 1.3 | 99.8 |
合計 | ― | 390 | 100 | ― |
【解説】
【表1】で、ABC分析の作成手順をみていきましょう。作成手順は、とても単純です。
まず、取引会社ごとに売上高が多いものから順番に整理していきます。
ここでは、1位から8位までの8社を扱っていきます。
つぎに売上総額に占める取引会社ごとの構成比を計算します。
たとえばA社なら売上高が100百万円です。
販売順位の1位から8位までの売上高総額が390百万円です。
したがって、構成比の計算はつぎのとおりになります。
A社売上高 売上高総額 売上高構成比
100 ÷ 390 = 25.6(%)
構成比は、25.6 %と計算されます。
取引会社ごとに販売構成比を計算していきましょう。
つぎに累積比の計算です。
これは、構成比を加えていくだけの計算です。
B社の累積数字は49.9%ですが、この計算方法はつぎのとおりです。
A社構成比 25.6% + B社構成比 24.3% = 49.9%
D社までの売り上げで、累積比率が85.8%になります。
このように累積比率を活用することで、重要な取引先を選別していくことが、
ABC分析の第一歩になります。
[ABC分析ダイジェスト講座]