採算性を知る
会社は、利益を追求する以上、あらゆる場面で採算を考えなければなりません。
採算性とは、収支トントンのことです。
つまり、利益がプラスでもマイナスでもなく、ちょうどゼロの売上高を知ることです。
この「利益ゼロの売上高」のことを損益分岐点といいます。
損益分岐点を知れば、いくら売れば利益が出るのか、がわかります。
売上をあげるためには、まず、利益と損失の分岐点を知っておく必要がある、というわけです。
それでは、身近な例で、採算性を考えてみましょう。
乗車券か?それとも、定期券を購入すべきか?
あなたは、毎日、電車で通勤しているとします。
一日の乗車料が、片道250円、往復500円です。
定期券代は、1ヵ月10,000円です。
このとき、採算がとれる利用日数は、何日でしょうか?
ざっくり、計算してみましょう。
定期券10,000円÷500円=20日
通勤日数が20日なら、定期券を購入しても、毎日、乗車券を購入しても、
同じ金額を通勤費として支払うことになります。
しかし、20日の出勤日数を超え、かりに21日だとすると、つぎのような計算になります。
毎日の乗車券代(往復)500円×21日=10,500円
毎日の乗車券代 10,500円 > 1か月の定期券代10,000円
この比較からわかるように、毎日の乗車券を購入するか?定期券を購入するか?
この問題の解答は、出勤日20日が線引きになることがわかります。
この20日という線引きを知ることこそが、採算性を知ることになります。
変動費,固定費,変動費率とは何か
会社の採算性を知るには、つぎの3つの知識が必要になります。
・変動費
・固定費
・変動費率
順番にみていきましょう。
変動費とは、売上高に比例して増えたり減ったりする費用です。
仕入れた商品などが代表的な例です。売上が増えるほど、仕入れる商品も増えるからです。
変動費(円)=売上に比例して増減する費用
固定費とは、売上高に関係なく発生する費用のことです。
人件費が代表的なものです。社員の給与は売上高に関係なく支払わなければなりません。
その他、販売費や一般管理費も固定費と考えてください。
固定費(円)=売上に関係なく発生する費用
最後に変動費率です。
変動費率とは、変動費を売上高で割ったものです。
計算式はつぎのとおりです。
変動費率(%)=(変動費÷売上高)×100
これら3つの知識をつかって、損益分岐点売上高は求められます。
損益分岐点売上高の計算式は、つぎのとおりです。
損益分岐点売上高(円)=固定費÷(1-変動費率)×100
損益分岐点を計算してみましょう。
B社のデータは、つぎのとおりです。
損益分岐点売上高はいくらか。
【B社のデータ】 [単位:百万円]
売上高 3,000 仕入高 1,800 固定費 800
B社の損益分岐点売上高は、以下のようになります。
まず、変動費率をもとめます。
変動費率 60%=(1,800÷3,000) ×100
つぎに公式をつかって、損益分岐点売上高をもとめます。
2,000円=800÷(1-0.6)×100
損益分岐点売上高は、2,000円となります。
B社は、2,000円の売上高があれば、収支トントンの「利益ゼロ」になることがわかります。
つぎに2,000円のときに利益がゼロになるのかを検算してみましょう。
B社の損益分岐点売上高 (単位:百万円)
売上 | 2,000 |
仕入※ | 1,200 |
固定費 | 800 |
利益 | 0 |
仕入高は、変動費です。つまり、売上高に比例します。
変動費率は60%ですから、売上高2,000円に比例する仕入高は、2,000×60%=1,200 です。
はじめのうち、間違いやすいところですから要注意です。
このように損益分岐点を知ることで、どのくらい売れば、利益が出るのか、がわかります。
損益分岐点比率とは何か
経営分析の一つに損益分岐点比率があります。計算式は、つぎのとおりです。
損益分岐点比率(%)=(損益分岐点売上高÷売上高)×100
この比率は、小さい数字ほど良いことになります。
これは、売上高と損益分岐点売上高の数字が離れているほど、利益を確保しているからです。
反対にこの数字が大きくなるほど、経営は苦しいことになります。
利益が確保しにくい経営状態であるからです。
変動費と固定費の業界データを知る
変動費や固定費は、各業界によって、特色があります。
ここでは、中小企業庁が公表しているデータを参考にざっくりした業界データを表記します。
項目/業界 | 全産業 | 建設業 | 製造業 | 卸売業 | 小売業 |
変動費(%) | 74.8 | 81.1 | 78.2 | 83.2 | 73.1 |
固定費(%) | 23.1 | 17.3 | 18.9 | 16.2 | 26.0 |
[採算性を知る ダイジェスト講義]